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×アリエナイカノジョ×
第10章 ◆ Scene02
 
「…そして何故アタシは此処に居るのだろう………」

 思わず呟く美穂。

「えっ? 何か言った?」

「あ、ううん」

 数メートル離れた流し台の前に立つ影人の言葉に、小さく首を横に振る。

 チラチラと視線を四方へと向ければ、外装と同様に昭和初期を匂わせるような内装。

 然程広くない和室に円形の卓袱台。

 開け放たれた襖の奥には年季の入った流し台が見え、影人は手慣れた様子で手を動かしていた。

 更に数枚の襖が有り、他にも部屋があることが窺える。

 そして、僅かに開いた障子の間からは、手入れをされた小さな庭が覗く。


…何だか…田舎のお爺ちゃん家に来たみたい…
…暫く遊びに行ってないけど…行きたくなってきた…


 卓袱台の前に置かれた座布団の上で行儀良く正座する美穂は、遊びに行くことが無くなりつつ有る祖父の家を思い出すのだった。

「……大した物ないけど…」

「あ、ありがと。でも、そんな長居するつもりもないから気にしないで……」

 抑も、何故上がり込んだのか、自分の行動に小首を傾げる美穂だった。
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