この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
×アリエナイカノジョ×
第11章 ◆ Scene03
美穂が呟いた次の瞬間、‘ビシッ’と乾いた音が影人の隣から聞こえた。
「あいたっ」
次いで、額を押さえて上体を倒す紗英。
「アンタは何やってんのっ」
紗英の額に当たったボールを視線で追えば、何時の間にか、蹲る紗英の傍に美穂の姿。
…結城さん…数メートルの距離…いつの間に…
一瞬にして近寄った美穂の素早さに、影人は頬を引き攣らせたのだった。
…他の生徒もだけど……普通の人って…ボクだけじゃないよねぇ…
紗英限定ではあるものの、異様に視力がアップする自身を棚に上げて、周囲の環境に疑問を抱き始めた影人。
「ったく…。ちょっと目を離すと、アンタは直ぐ…」
「もぉ、分かったよぉ…。紗英が悪かったからぁ………態とじゃないのにぃ………」
ジャージのファスナーを戻し、転がっていくボールを追い掛けた紗英の後ろ姿を何気なく視線で追った。
その視線の片隅。
一階で腕組みをしながら壁に寄り掛かり、二階を見上げている生徒の姿が写り込んでいたのを気付いていない影人だった。
―――――――――
―――――
――