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×アリエナイカノジョ×
第11章 ◆ Scene03
 
 扉を引いて佇む紗英に中から声が掛かる。

「はぁ…はぁ……」

「まぁ、良いからこっち来てよ」

 依然として息を荒くさせた儘の紗英に、更に言葉が掛けられる。

「き、訊きたい…はぁっ…はぁ…事………」

「取り敢えず、こっち来ないと…先進まないよ?」

 言われた通りにしなければ答えて貰えないと判断した紗英は、ゆっくりと教室の中へと足を踏み入れた。

 雛壇状に長い机が並んだ教室。

 視聴覚教室の教卓にその男子は腰を掛けていた。

「そ、それで…」

「ははっ。そんなに焦る事無かったのに」

 両膝に手を着いて息を荒くさせた儘の紗英に、男子は爽やかな笑みを溢す。

「で、でも。あの先輩が急いでって………」

「大袈裟に言われたんだろうねぇ。ま、早く来てくれてこっちは嬉しいけどね」

 正行とは違う爽やかさを醸し出す男子。

 やや長めの黒髪や笑みを絶やさない表情は、女子に好感を持たれるに違いなかった。

「そ、それで……紗英に…用事って………」
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