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×アリエナイカノジョ×
第2章 この一コマ
 
「…っく…またか………」

「まぁ…ドンマイ…」

 項垂れた肩をポンと叩かれる。

 チラッと横目で見れば、言葉とは裏腹にニヤニヤした表情を浮かべていた。

「しっかし……葉山も鈍すぎじゃねぇの?
 何回も手紙入れられてんのに、毎回結城のトコに突っ込んでるし………」

「………」

 其れについては何も言えなかった。

 手紙なんてさっきのが初めてじゃない。

 既に五、六回は出している。

 それにも拘わらず、毎回隣の下駄箱に入れられていた。

「あの様子じゃ…名前も覚えられてないみたいだしな…」

「…ぐぅ」

「やっぱ、名前が悪いんじゃね?
 『薄井 影人【ウスイ カゲト】』なんて、影薄そうだもんな」

 ケラケラ笑い飛ばすコイツを殴ってやりたいと、今ほど思った事はなかった。

 それでも堪えた自分を褒めてやりたい。

「っと…。そろそろ俺たちも行かねぇとヤバいぜ?」

 葉山が階段を駆け上がって行った頃合いを見計らって、隠れていた柱の陰から抜け出した。
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