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×アリエナイカノジョ×
第5章 カノジョたちの一コマ
 
 ちょっと俯いていたら、何やら声を掛けられた。

 痩せた坊ちゃん刈りの男子。

「…ん?」

「え、えっと………」

 黒縁メガネの奥で視線をキョロキョロさせながら、しどろもどろに何か言おうと頑張ってる。

 誰だかサッパリ分からない。

「あっ。えっと…アナタは………」

 小首を傾げていると、美穂ちゃんが助け船を出してくれた。

「は、はいっ」

「確か、紗英にラブレ…んぐぐぅっ!?」

「はいはい、おクチチャックねぇ」

 正行くんに後ろから口を塞がれて、目を白黒させてる美穂ちゃん。

 仲が良いなぁ。

 結局、美穂ちゃんは何が言いたかったのか分からない。

「え、えっと…。初め…まして」

「う、うんっ」

 こっちの男子も熱でもあるような感じで顔が赤い。

「頑張れっ」

「んぐっ、んぐぅっ」

 何故か正行くんと口を塞がれてる美穂ちゃんが応援してる。

 何の事だかサッパリ分からない。

 それよりも、またあの小説を思い出した。

 紗英はあんなに天然じゃない。

「顔…赤いけど……熱あるの?」

「はあぁぁぁ………」

 深い溜息を正行くんと美穂ちゃんに吐かれた。
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