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×アリエナイカノジョ×
第5章 カノジョたちの一コマ
 
 不意にグダグダっとした雰囲気が滲んでくる。

 アタシとの会話もそこそこに、正行の執拗な求愛擬きを薄井くんに向けている。

 余り話さない薄井くんは、無表情で右手を繰り出すだけ。

 どれだけ飲み物を迷ってるんだ、あの娘。

 さっきまでおざなりにしていたのは悪かったから、早く戻ってきて欲しい。

 切に願う。

 視線を向けても、店内のレイアウトのせいか、紗英が小さいせいか見える事は無かった。

 ぐだっとした雰囲気も悪くは無いけど、長くなってくると飽きてくる。

「あ…」

 そこにアタシの中の神様がネタを思い出させてくれた。

「あのさぁ…」

 乳繰り合っていた二人の視線が向けられる。

「どうした?」

「薄井くんって…紗英にコクれたの?」

「……え…?」

 ポロッと咥えていたストローが落ちている。

 殆ど無表情ばかりの薄井くん。

 目を見開いて驚く様は希少価値がある気がする。
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