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金木犀
第2章 意中之人

「紫苑……」

颯太は少し険しい顔つきで、紫苑の手を握った。
普段は学校でこのようなことはしない颯太なのだが、今日は妙に行動及び言動がおかしい。

「まあ──何となく、察しはつくけど……」

さっきので察しがつくらしい。
愛の力だというのだろうか。
だとしたらイライラする。

「ふーん……。へえ、そう。うんうん、わかった」

そういって、紫苑は颯太の頭を撫で始めた。紫苑は颯太よりも背が低いため、頑張って背伸びをして撫でている。
ほとんどつま先立ちである。
バレエみたいだ。
プルプル震えているぞ。そんなに無理をしなくとも。

しかし颯太は嬉しそうな顔をしている。
少しだけ顔が赤い。

「ふう……。と、いうわけで、今日は失礼するね、翔夜くん。用事できちゃったし……。あと、これからよろしく」

「何を改まって……」

「だって同じクラスだもの。ふふっ。気づかなかった?」

じゃあね、とそそくさに去っていく紫苑。
あいつの笑顔に見え隠れする、腹黒さは嫌いではないのだが、なんだか俺を置き去りにしてどんどん物語が進んでいっているような気がする。

颯太は落ち着きを取り戻したらしく、いつものようにニコニコ笑っていた。
しかし、俺の気のせいだろうか──

その笑顔に、すこしだけ陰が見えたのは。



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