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金木犀
第2章 意中之人
始業式ということもあり、特にやることもないようで、学校は午前中のみで終わった。
とはいっても、しばらくは暇である。
どうやって暇をつぶすか考えながら、一人で帰ろうとしていてところ、颯太と紫苑に呼び止められた。
何でも、何処かへ遊びにいこうということらしかった。
高校生という身の上、金銭的に余裕があるわけでもないのに、よく遊ぼうと思うなと半ば呆れながら無視をしていたら、紫苑が泣きそうな顔をしてこちらを見てきたので、渋々応じることにした。
泣き落としは紫苑の十八番であり、恥やらプライドやらを完全に捨てた、子どものような泣き方をされてしまうので、こっち側が折れないと後が大変なのだ。
嘘泣きでそれが出来るのだから、本当に泣いたらどうなってしまうのだろうか。
何でも、遊ぶといってもただ単に、学校の近所にあるファストフード店に入り浸って、雑談に興じるだけだった。
話している内容も、非常にどうでもいい話ばかりだ。
「だからね、ドラえもんの秘密道具には、確かに便利なものもあるんでけれどね、『夢たしかめ機』みたいに何に使うかわからない道具もあるの」
「『夢たしかめ機』って?」
「その名の通り、夢を確かめる機械よ。これが現実か夢かを確かめてくれるの」
「どうやって?」
「こうやって、頬をつねってくれるの」
「何のために開発されたんだ?」
「わかんない」
「じゃあ、どんな時に使ったんだ?」
「確か──『のびたの南海大冒険』っていう映画の中でドラえもん達がリヴァイアサンに飲み込まれた時、胃袋をつねって、そのおかげで外に出れたの」
「ふうん。役に立つのか役に立たないのか、いまいちよく分からない話だね」
「でも、私はドラえもんのこういう、意味不明なところも好きよ」
「まあね」
とか、そんな感じだ。