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金木犀
第2章 意中之人

「翔夜!」

どうやら家の前で俺が来ることをずっと待っていたようだ。
制服から白色の清楚なワンピースに着替えている。
個人的に、このワンピース姿はどストライクだった。

俺の姿を見るなり、抱きついてきた彼女は、頬をすこし染めながら、俺の目を上目遣いで見た。

「……聞きたいことがたくさんあるんだからね?」

「悪かった──」

俺は彼女の頭を優しく撫でた。
なんでも彼女は頭を撫でられることが好きらしい。

「で、私の演技はどうだった?」

「完璧だった」

「ふふっ……。よかった。バレていないみたいで」

彼女──御影椿は、悪戯を成功させた小さな女の子のように、にっこりと笑った。
すこし潤んでいる目で、俺を誘うように、家の中へ入っていった。
それに続いて俺もお邪魔する。

綺麗に整頓された玄関を抜け、リビングのソファーに腰掛ける。
そのすぐ横に、ちょこんと彼女が座った。

「それで、どうして言わないの?付き合ってるって──」

「柄じゃないだろう?」

「そうかな?大切なお友達でしょう?」

そう言って彼女は俺の顔を覗き込んできた。
きらきらと輝いている、大きな瞳に俺が映り込んでいた。

「く、腐れ縁だ」

「ふふっ。照れちゃって──きゃっ!」



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