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金木犀
第1章 五里霧中
とは言っても、普段は学生として、高校生として、学校に通っているのだが、しかもなんやかんや言ってまじめに通っているのだが、先生や生徒に殺意を抱く事はあっても、お金の関係上、学校には通わなくてはいけないので、渋々ながら通っているのだから、殺人なんて犯してしまえば、学校に払っている金が浮いてしまうのは正直嫌だ。ものすごく嫌だ。俺は金が好きだし、金のためなら何でもする。
ああ、いい事を思いついた。
将来は殺し屋かなんかになればいいんだ。
うん、我ながら、非常にいい考えだと思う。
だがしかし、よくよく考えてみると、殺し屋になってしまったら、俺が殺したくない人まで、殺さなくてはいけなくなるのではないだろうか。
それは悲しい。悲しすぎる。
俺は俺が殺したい相手だけを殺したいし、それ以外の連中はどうだっていいのだ。
何が悲しくて、罪なき人を殺さなければならないのだ。
そもそもの問題として俺の美学に反する。
つまりこれは却下だ。
じゃあ、この進路希望の欄に一体なんと書けばいいのだ。
大学進学ではあまりにも芸がなさすぎる。
それに、大学に進学するには金が必要だ。
特に学びたい事もないのに、金を払ってまで進学する必要性があるのだろうか。
いや、よく考えてみろ。
大学卒業資格というものは、このデフレの社会において必要不可欠ではないのだろうか。
大学を卒業していなければ、定職に就けるかどうかなど、一割もないのではないか。
まあ、あくまで俺の憶測なのだが。
とはいっても、やはり、仕事には就きたい。
なんて言ったって世の中は金で回っているのだから、その金がないと生きてはいけないし、金がなくなってひもじい思いをしていると、殺したい相手が殺せなくなってしまう。
それは駄目だ。
それだけはいけない。
ならば、この進学か就職かの欄には進学と書く事にしよう。
そうだなあ、学部──未定でいいだろう。
そもそも、殺人学科なんてないだろうしな。
そこまで書き終えたところで、チャイムがちょうど鳴ったので、俺は足早に教室を後にした。