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金木犀
第1章 五里霧中
その日の放課後になり、俺は暇つぶしのために図書室へ向かった。
この高校の図書室はなかなかに有名な蔵書の数を誇っているわけではもちろんなく、必要不可欠な本だけがそろっている、ノーマルな図書室である。
窓際の席に腰掛け、ノートを開く。
そのノートに、取りあえず今日あったことを書き連ねてみた。
日記みたいなものである。
ただの暇つぶしに始めたことなのだが、これがなかなか頭の運動になって楽しい。
暫しの間、イライラを忘れられる、大切な時間だった。
何より、静かなところがいい。
うるさい場所は嫌いだ。
イライラする。
ああ、思い出したらまたイライラしてきた。
イライライライライライライライライライライライライライライラ。
気づいたら、ノートにイライラと書いていた。
どれだけストレスがたまっているんだ。
まあ、どうだっていい。
イライラしているのはいつものことだ。
一時間ほど日記を書いていると、もう既に五時を回ってしまった。
しまった、と思う。
先ほど書いた進路希望用紙を担任に提出することをすっかり忘れていたのだ。
鞄の中を探ってみても、見つからない。
誰かがご丁寧に俺の鞄から取り出し、紙飛行機にでもして、窓から飛ばしたのでもなければ、きっと教室の机の中に置きっぱなしだろう。
参った。
またイライラしてきた。
いや、落ち着け。
忘れたのは俺のせいだろう。
だから、誰も恨む必要がないはずだ。
気持ちをゆっくり落ち着けて、図書室を後にする。
図書室は二階、教室は三階だ。