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金木犀
第3章 悪因悪果
「私、御影椿。御家人の御に、日が照ったら出来る、漢字の旁に風景の景が入っている方の影、あと花の椿で御影椿だよ」
「俺は──ツツジ科の花の皐に、お月見の月、それから飛翔の翔に夜で、皐月翔夜」
漢字の説明までされてしまった。
思わずそれに習って、自分の名前も丁寧に説明する。
その返答に満足したのか、目を細めて嬉しそうに笑った。
「これから、よろしくね!」
そんな、いささか不思議な、まるで何かのギャルゲーのような出会いであった。
よく自分も警戒心を解いたものだと思う。
よく考えてみると、下心なしに、ノートのページ半分にイライラすると殺したいを書き付けている男に話しかけようとはしないだろう。
本当に恥ずかしい限りである。
俺もきっと、人恋しかったのだろう。
──彼女が人かどうかは、微妙なのだが。
彼女の性格は噂通りのものだったし、誰でも気さくに話しかけるフレンドリーさはすばらしいものだった。
いつも笑顔で明るくて綺麗で可愛らしくていい子。
欠点がないところが欠点。
完璧。
そんな称号がよく似合うような、人間離れした人物だった。
そんな彼女に惹かれるのは時間の問題だった。
彼女は男心をよく理解していた。
して欲しいこと、言って欲しいことをきちんと理解していて、それを平気でやり遂げるのだ。
それはもう、世の男たちはめろめろになるだろう。
しかも、その上世渡り上手でもあり、女子に嫌われるようなことも全くなかった。
むしろ好かれていた。
輝かしいほどに、見事なまでに、充実した学校生活を送っていた。