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金木犀
第1章 五里霧中
「──ん!」
声がした。
女の声がした。
喘ぎ声と思われる女の声がした。
教室から、喘ぎ声と思われる女の声がした。
俺の目的地である教室から、喘ぎ声と思われる女の声がした。
階段を上がっていると、俺の目的地である教室から、喘ぎ声と思われる女の声がした。
何故喘ぎ声かと分かったかというと、その声はひっきりなしに聞こえていて、それはもう、廊下どころか階段にまで筒抜けだったからだ。
残念ながら、廊下および階段には俺以外誰もいない。
喘ぎ声が聞こえようと、叫び声が聞こえようと、産声が聞こえようと、俺は教室に行かなければならないのだから、特には気にしていない。
ただ、イライラはしている。
特に何の躊躇いもなく教室の前まできて、それがさも当たり前のことのように、教室の扉を開ける。
「はあ……」
なんというか、まあ、予想通り、ことに及んでいる男女がいた。
ため息が出る。
女の方は、若干目に涙を溜め、こちらを見ている。
制服のシャツがはだけて、ブラが外されており、小ぶりな胸が露わになっている。
下着も脱がされたのだろう、あろうことか、俺の席に置いたあった。
男はズボンをずらし、女の中に挿入しているところだった。
カーテンの閉まった窓に女を押し付け、腰を激しく振っている。
どうやらこちらには気づいていないようだ。
残念なことに、俺の席は窓際で、その二人から一番近い場所に位置している。
「ん……やめ…っ…」
「やめろって……?本当は気持ちいいくせにっ」
「ちが──っ。んあっ……!」
このまま無視するのも、まあありかなーとは思ったのだが、進路希望用紙をとるためには、退いてもらわなければならないので、懐からたまたま持っていたナイフを取り出し、男の首に付けた。
よく見ると、床には射精をした跡が残っている。