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金木犀
第1章 五里霧中
ただ、こういうときって普通、泣きわめいて恥じるもんじゃないのか?
あるいは──あまりに衝撃的だったので、魂が抜ける、とか。
それなら理解できる。
十分だ。
それが普通の反応なのだから。
だが──この女は違う。
この女は──恐ろしいくらい冷静だ。
相手を罵倒することも、いきなりってきた俺をにらむでも、事が終わったことを喜ぶでもなく、ただ冷静に、服を着ていた。
男がズボンを穿いたのを見て、冷静に服を着た。
あ、終わったの、よかった。なら服着るから、そんな感じで当たり前に服を着ていた。
普通、そんな風になるか?
あの男の生殖器には血がついてしまっていた。
ということは、彼女は処女を奪われたということだ。
あの男がしていたのは完全に強姦だ。
強姦された後は、あんな風に普通になれるもんなのか?
俺の認識が間違っているのか?
それとも、そんなに尻軽な変態女だったのか?
なんだか妙だ。
あの女はおかしい。
ずれにずれまくっている。
そんな風にしか思えない。