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金木犀
第2章 意中之人
俺には友人が一人いた。
いつもニコニコ笑って、犬みたく愛想を振りまいて、誰にでも尻尾を振っているような、馬鹿な友達だ。
腐れ縁というかなんというか、その友人とは何かと共に行動することが多かった。
幼稚園時代から今まで、ずっと一緒だった。
昔は非常に鬱陶しい奴だったのだが、だんだんなれてきて、今ではそれなりに楽しくやっていると思う。
そんなことを奴に言うと、
「なになに翔夜は俺のこと好きになっちゃった?あははー。でも残念だけどー俺にそう言う趣味はないんだよねー。いや、翔夜のことは好きだよ。好きなんだけど、それは友達としてっていうか……。うーん、ごめんね、本当に。俺、女の子が好きだからさ」
とかいう、酒でも飲んで酔っているようなことを言うだろう。
奴が俺に対して向けている感情がよく分からないのだが、俺はそんな風に見えるのだろうか。
だとしたら、屈辱なのだが。
二年生に進級した日、クラス分けの発表があり、どんなクラスだろうと、どうせ奴とは同じクラスになるのだろうとか思いながら、しかし、万が一、奴と同じクラスじゃなくなったらいいなという、少しの期待を持ちながら掲示板を確認したのだが、案の定、奴とは同じクラスだったがために、酷く凹んでいたとき、これまた迷惑なことに、奴が俺の目の前に現れた。
「やっほー翔夜。また同じクラスだねえー」
「はあ…………」
「なんだよ、そんなに落ち込んで。仕方ないだろう?たまたま、幼稚園の頃からずっと同じクラスなんだからさ。そういう運命なんだよ」
「『たまたま』?これがたまたまで済むか……?」
「うーん……。確かに偶然にしては出来すぎているけれどさ、まあいいじゃない。もう決まっちゃったし──」
「俺がお前から解放される日はいつ来るんだ?」
「そんな本気で悩まなくってもいいんじゃない?」
「何が嫌でお前と何か──」
なんだがこの会話がずっと続く気がして、喋るのをやめた。
これから、また騒がしくなるのだと思うと、酷く気持ちが落ち込んだ。