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影に抱かれて
第11章 回りだす歯車
自分が死んだと思い、絶望していたジュールの気持ちを考えると責めることなどできない。しかし自分も祈りの日々の中で、ジュールへの気持ちを立ち切れずに苦しんでいた。
その間に……一年近くもあんなことが行われていたなんて。
黙って頷くジャンを見て、リュヌの胸はきゅっと軋んだ。
「旦那様が亡くなられたのは、ジュール様とお二人で遠乗りに出掛けた時なんじゃ。詳しくは語ってくださらんが……旦那様は誤って崖から転落してしまったらしい。その一部始終を見てしまったジュール様が深く傷つかれるのも無理はないが……。このような事態は何としてでも変えなくてはならん。奥様も藁にでもすがる想いでお前を呼び寄せたのじゃろう」
夫人の部屋に向う途中、リュヌは考えた。
あの女はどういう素性の人間なのだろう……恋人なのだろうか。根掘り葉掘り尋ねるのは躊躇われて、ジャンには聞けなかった。
夫人からはそれについての話はあるだろうか……
もしかすると、あのパーティーの少女たちと同じような女なのかもしれない。あの少女たちは、行為の見返りに報酬を受け取っているとドゥルーは言っていた。そんな女とジュールが身体を重ねているとは……
どちらにしても、考えるだけで胸が苦しくなるリュヌだった。