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影に抱かれて
第14章 滅びる運命
「開けなさい……! この扉を開けるのよ! 」
「……仰せのままに」
ジュールは小さく笑いながら、木の枝を秘密の穴に差し込んで木戸を開けてやる。その枝は、ここへ来る途中に予め拾っていたものだった。
戸が開くやいなや夫人は中へ滑り込み、塔の上を目指す。
燃え上がるような怒りに、背後から感じる雷の光りも地を裂くような落雷の音も気にならない。悲鳴を上げることも忘れ、ただ階段を一心不乱に上っていた。
水を吸って重たくなったドレスの裾を引きずりながら、夫人は頂上を目指す。
ジュールがこの上に女を飼い、それがどんな女なのか知りたくて堪らなかった時も、伯爵夫人という体裁のために、このような場所へは立ち入らなかった。
下女に様子を見に行かせたところ、ブロンドの女といかがわしいことをしているということだけが夫人が得た情報だ。
初めはリュヌのことを忘れた証だと思い、相手が売女ならばすぐに飽きるだろうと思っていた。しかし家のことを何もせず、一年も同じ女とただ身体を結んでいるジュールの薄汚れた姿は見たくなかった。