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影に抱かれて
第15章 その、白い手
「ジュール様は、お前の出生の秘密を知っておる。いや、初めは知らなかっただろう。しかし……伯爵様がお隠れになった以後は、知った上で……お前を側においておるんじゃ」
「まさか……」
自分だって、ジュールが兄だと知った今でもこの愛が変わる訳ではない。
しかし、罪が重すぎる……
この事実を先に知っていたら、あのような関係にまで陥っていたかどうか……混乱する頭ではよく分からなかった。
「いや、間違いない。お前が寄宿学校へ行っても一向に前を向こうとしないジュール様に、血の繋がりの話をして諭すつもりだと……そう言って旦那様は二人で遠乗りに出かけたんじゃ。そしてそのままお戻りにならなかった……」
「……話を……したかどうか分からないじゃないですか……」
「いや、そうでなければ……彼女を探し出し、連れて来る筈がないんじゃ……」
「彼女……?」
「あの塔にいた女性は……イネス。お前を産んだ母親なんじゃ……」
ジュールに貫かれ、淫らな声を漏らす女性の姿が蘇る。それは、封印したはずの記憶だった。