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影に抱かれて
第4章 雲に隠れて
「将来のことなど、今決めなくてもいいではありませんか。学校の方で良いご縁があるかもしれませんわ」
さらにジュールも、先ほどから手にしていた紅茶のカップをガチャンとソーサーに戻して立ち上がった。
「父上、僕は失礼するよ」
笑顔が顔に張り付き凍ってしまったリュヌの顔を一瞥して、ジュールは部屋の外に出ていってしまった。夫人も苦々しい顔をしている。
ジュールは反対なのだろうか?
二度と会えない訳ではないのに。
きちんと勉学すれば、今度こそ本当の意味でジュールの為に一生側で働くことができるのに。
夫人やジュールの態度は気になったが、リュヌの心は決まっていた。しかし……
「意見がまとまっていなくて、リュヌを驚かせてしまったね。今すぐに決めろとは言わない。また後日改めて話をしよう。なあに、心配しなくても大丈夫だよ、半年以上先のことだ。ゆっくり考えればいい……」
「ありがとうございますっ……」
伯爵がリュヌを思いやった言葉を掛けてくれる。
こんなに親切な方はいない……と感謝の気持ちでいっぱいになりながら、リュヌは部屋を後にした。
「貴方はリュヌに甘すぎますわ! ジュールのあの態度……リュヌさえ居なければ、もっと素直で優しい子に違いないのに」
ここ数年、愛情を注げば注ぐほど広がってしまうように感じる息子との間の溝を、その大半をリュヌのせいにすることで夫人は心のバランスを保っていた。