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影に抱かれて
第1章 月夜の贈りもの
その像が置かれているのは、木のテーブルに花が並べられただけの……
「祭壇……? 」
「そう、リュヌの為の祭壇だよ。前に物置部屋で一緒に母子像を見つけただろう? 実はあの時に思いついたんだ」
「すごい! でも……大変だったでしょう? 」
「いや、そうでもないよ。それにリュヌのためだったら……なんてことないさ」
いくら身体の大きなジュールでも、テーブルをここまで上げるのはかなり大変だった筈だ。きっと自分を喜ばせようと、一人で……。
その苦労を……その気持ちを考えると、リュヌは身に余るような幸せを感じた。
両親は貧しく、リュヌがまだ赤ん坊の時に二人とも流行病であっけなく死んだと聞いている。伯爵夫妻がそんな自分を拾い上げ、使用人として育ててくれただけでも感謝しきれない程なのに、さらにその息子のジュールはこんなことまで……
そこまでしてくれる理由はリュヌには分からなかったが、自分の生涯を、命を、ジュールに捧げたいと願う青年に成長していくには十分だった。