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ドラスティックな恋をして
第10章 他人の目に映る自分・・
翌日、朝食を済ませてからみんなで観光名所に出かけ、
いくつかまわった後昼食に信州の蕎麦を堪能した。
車で来ていた小堀夫妻とは食事の後そこで別れ、
電車で来ていた田村夫妻を上田駅まで送った。
「依子さん、退屈したらいつでも私達を誘ってくださいね」
満理奈は自分の名刺にケータイ番号を書いて差し出した。
「ありがとう、是非」
名刺を受取りながら依子も袋を差し出した。
「電車なら飲めるでしょ?」
渡したのは、グラスの形をした小さなワイン2つとチーズ。
土産物屋を2人が見ている間に買っておいたものだ。
ありがとうございます、と手を振りながら改札の奥へ消えていく2人を、
姿が見えなくなるまで見送ってから改札の前を離れた。
「依子は?今日帰るのか?」
駐車場に向かいながら悟志が聞いてきた。
いつも日曜のうちには帰ってしまう妻。
今日も家に帰ったらまたすぐに駅まで舞い戻るのかと悟志は肩をすくめた。
「今日はさすがに帰らないわよ、片づけしなきゃならないし。
あなた一人に任せるほど薄情じゃないわよ、私」
フンと鼻を鳴らす妻の姿に悟志は目を細めた。
「じゃあ、またあの温泉に寄って帰るか?」
「うん、そうしましょ」
助手席に乗り込み運転手の横顔を眺める。
この人に代わる人は、やっぱりいない、と依子は正面に向き直った。