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ドラスティックな恋をして
第6章 夫という現実
町営のこじんまりとした立ち寄り温泉だが、
土産物屋や食事処が併設されているので、旅行気分を盛り上げながら
しばらくそこで湯から上がったばかりの熱った体を休めることにした。
「お風呂上がりにはビール、と言いたいとこだけど、それは家まで我慢しましょ」
車の運転手である悟志に付き合って、依子もコーヒー牛乳で喉を潤した。
ガラス窓から見える、青から紺色へと移る空。
空気が澄んでいることがまるで目に見えるかのような透明感のある色は、
依子の目には物珍しく映った。
「こんなに空気も景色もいい田舎で生活したら、悪い根性も浄化されそうね」
「2日もいれば十分浄化されるよ」
「あら、それ私のこと?」
悟志はもう言葉を返さずに笑うだけでいた。
ああ言ったらこう言ってくる妻は、きっと一人で寂しいのだろう。
家の中で一人、言葉を交わす相手がいないのだから、
ここぞとばかりに喋り捲りたいのだと、
依子の話にうんうんと声に出して相槌を打った。
その声を聞いて、依子は満足げな顔でしゃべり続けた。
家に着くまでずっと。