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ドラスティックな恋をして
第7章 はじまり・・
少し人ごみが落ち着いたところで依子は昌宏を見上げて、
「あの、これからどこへ?もしかして美術館ですか?」と行先を聞いてみた。
わざわざ上野の公園口を指定したのだから、やはり目的地は美術館じゃないか、と
簡単に想像した。
ところが返ってきた答えは想像外の場所だった。
「動物園だよ」
「え?動物・・上野動物園?」
あまりの意外さに依子は思わず足を止めた。
まさか、この男の口から動物園、なんて言葉を聞くなんて。
「なんで?だめ?」
「いえ別にダメじゃないけど・・」
「じゃあなに?」
「いやぁ・・意外だなと思って。吉本さんの口から動物園、なんて」
40代も後半の男と女が、それも恋人同士でも夫婦でもない男と女が、
日曜の昼下がりに子供連れの家族に交ざって動物園に行く。
一度も結婚したことのない中年の男が、
家族連れがメインと言ってもいいほどの場所へ、ただ知り合っただけの女を連れて行く。
ますますこの男のおもしろさに依子はハマっていった。