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第12章 『情事』
指の先から上がる、小さな鬼火が身体の中心を焦がしまるで焼かれる様な気持ちがしてならない。

春風さえも、身体に纏わり付き外界の音を遮断する。

口端の笑みは、消えない。やめての声は微かで、魔王の楽しみを増すばかりだ。

聖の指が絢音の、確実に魂に触れる部分を貫いた。

「目を見ながら逝きや。逝く時の絢音の顔は一番、綺麗やわ。愛してる、ええ子や。」

目の前に真っ白な景色だけが広がる。

身体が弓なりになるのを堪え、唇を噛み締めた。

声が漏れそうだったから。芯は奮え、指先を飲み込む。

「きついわ、絢音。逝ってもまだ、放さへんなんて、ほんま淫靡で淫乱やなぁ。気に入りに、なるわ。飽きへん。」

ずるりとしかし指を抜き、それを口にさらりと舐めて笑んだ後に口元に持って来られた。

「綺麗にしぃ、自分の味を知るんや。こないに汚して。」

「こんなとこでは駄目よ、回りに人がいるし…」

「早う、もう一度 仕置きしてもええんやよ。」

それに身震いが来て、指先を舐める。抜かれた下の口が、まだまだ疼いた。

それを下から見つめ、楽しげだった聖を悔しそうに眺めながら人差し指を舐め絡めとった。

顔が赤い、ほてる身体はつらさを増した。

ゆっくりと右手が上がり、首元に添えられた。

聖が少し身を起こす。唇が触れる。逝った後は必ず優しい、口付けをくれる。

その理由が知りたかった。

本当にどちらが、本当の聖なのかを…

愛して、憎んだ。
魔王を、聖を…

「どうして、最後は優しいキスをくれるの。」

起き上がり、抱きしめられた。耳元の囁きがくすぐったい。

「ええ子には、褒美や。愛してる、絢音。」

もう、絶対力の愛してるには敵うはずがないと心に思う絢音だった。

抱きしめ返す、絢音。

「聖は本当に狡い…」

ゆっくり起き上がりじっと見つめる。

猫の絢音には見つめ返されるのは、目を反らしたくなる。

顎に指を掛けられる。

「愛してるにはなんて言うんや。」

目をじっと見つめ返して囁くように言った。

「愛してるでも、憎んでもいるわ。私の魂を奪った事を。」

「やっぱり、その目がいい。強い眼差しが絢音やわ。誰よりも美しい僕の奴隷、もっともっと快楽を与えて 楽しませたいわ。」
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