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第13章 『心底』
「ホテルに帰るまで、待てへん。絢音の唇が欲しがってる。」

「そんなことないわ、聖の方がキスは欲しがりだもの。」

「普通や、一緒にいて触れ合いがないなんて意味がないわ。」

それはそうだけどと思いながらも、翻弄される気持ちにそわそわしてならなかった。

「絢音、愛してる。もっと素直になりぃ、そうすれば気持ちが楽になるんやから。肩に力ばっかりなら疲れるんよ。」

「それは、そうしたいけど…もう癖みたいものだから。甘え方を忘れてしまったわ。ずっと、頑張って来過ぎたみたい。」

「力抜いて、息を吸って。手が駄目なら足を出し。下ならあんまり見えへん。」

「もう、結局そんなこと。聖の方がよっぽど甘え上手。」

「そりゃあ、甘えもせんと毎日しんどいしなぁ。」

緩やかな話ぶりに、心がゆったりになる。関西弁を聞き慣れていないから、余計にだった。

サンダルを履いていたから、足は素足だった。聖も靴を脱いでいた。

疲れた足には、靴はつらいと着いてすぐに。

「足、少し冷たいやん。温めてあげるわ。」
足先を足の間に挟んだ。温もりが心地良かった。

夜景と共に温かい空気が流れたが、肌に触れられると自然と身体がほてる。

まるで聖に身体を作り変えられて、しまったかのように…

眠っていた女を呼び覚まされてしまった。

温められた足先は、じんわりとしていたが別の下半身までもが濡れている気持ちがして、ぐっと足の間に力が入った。


なのに、それに気付かれ片足が足の間にするりと滑り込んだ。

聖をじっと見返した。ソファーに寄り掛かり、ゆったり構えスパークリングを飲みながらまるで絢音と言う蝶を鑑賞してるようだった。

呼吸が早まる、また魔王の作る結界で回りの音が遮断されてしまう。

「食事の手が止まってるやん。食べさしたるか?目は反らさん。こっち見ながら、続け。」

「じゃあ、足を抜いて。温まったから、ありがとう。食事に集中、出来ないもの。」

ゆっくりと足が上がる。ロングスカートの中は、素肌がひんやりして気持ち良かった。

にやつく顔はいつも通りだった。ぐいっと足が開かされる。後ろを気にしたが、騒めきがあるだけのようだった。
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