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第17章 『距離』
「そんなこと…」

「正直に言わへんなら…指を抜く。どうして欲しかったん。」

抜き挿しされる指が、身体をとろとろに溶かすようだった。
言葉がゆっくりと漏れる。

「聖に…沢山して欲しかったで…す」

びちゃびちゃの音は激しさを増す。外にまで、聞こえそうで身体はそれに反してますます気持ち良くなった。

「ご主人様やろう、逝きや絢音。ずっと二ヶ月この指を欲しがってたんやろうから。」

声が耳に入り、脳を支配する。その指の動きよりも囁きは絶大だ。身体がびくびくと反応を示し、崩れ落ちるのを片足を入れられ押さえられる。

びくびくと痙攣の残る身体を抱きしめられ、再び優しいキスが降り注いだ。


温かい唇と、被虐の後の抱擁。繰り返される飴と鞭。

何度も行き来している内に脳に酸素が回らなくなり、常に発情した身体にさせられ触れられただけでも逝きまくってしまうようになるのだ。
それに逆らう事は、もう出来なかった。
呼吸が整って来て、恥ずかしさで俯くと顎に指をかけられ軽いキスをくれた。

いつもの余裕の笑みを浮かべながら言葉は漏れる。

「気持ち良かった?」

胸を叩く絢音。

「もうっ、本当に強引。上がりましょう。声が聞こえちゃったかも。」

「聞きたい奴には、聞かせればいい。絢音の声は可愛いんやから。逝き声は、特に。」

上がりながらそれに反応し怒りたかったが、階段が狭すぎて早うと促された。

二階に上がると、キッチンお風呂が続きでワンフロアがあった。

食事は終わっていたので、飲み物を飲むか聞いて買ってきたワインで少しまったりと時間を過ごそうと思った二人だった。

グラスを探して棚を開けると、一人暮らしだったのに整えられていた。

更に目に着くのはあちこちに食器が二つあったり、お箸が置かれていたりする。
明らかにそれも女物だった。ぐっと質問したいことを堪え、チーズを皿に載せオリーヴを添えた。

今までにも女の人がいたのは分かっていた事だった。余計な嫉妬は身を焦がす事に繋がる。
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