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・辿りつく 先には・
第17章 『距離』
小さなテーブルには簡単だったが、乾杯が出来る程にはなった。

ワインを注いで貰う頃には何とか、気持ちを立て直した。

持ち上げて乾杯と小さく言う二人。

「再び出会えた事に乾杯…」

「聖が元気だった事に乾杯…」

「ありがとう、絢音も頑張ってたね。」

「やり切らないとね、悲しんでばかりいられないから。でも、何とかなりそうよ。」
「あとは色々な事が軌道に乗れば、進めるね。絢音はぶれないから、きっと大丈夫。」

そうだと言って、荷物を持って来る。お土産を幾つか取り出したあと、一番の物を見せる。

縦長の絵画は緑と金で埋め尽くされていた。立て掛けて戻ると、腕を広げられていたのに笑いながら、足の間にすっぽりおさまりキスを交わす。

二人でワインを飲み、絵を眺めた。美しく淡い緑は私、金は聖を現していた、色で人を表現したからだ。


右手にはグラスを持ち、左手は太ももに置かれている。

「綺麗やね、絢音の色使いは独特やけど海外でなら更に気に入られそう。日本人は抽象に弱いから…」

「感情の感じ方に、鈍い方が多いから。生きて来た習慣が違うし、仕方ないんだけど。」

「海外には?って三月にはトルコやドーハに行ってたなぁ。」

「トルコは本当にずっと憧れてたから嬉しかったぁ。」

「この間も聞いたけど、沢山いろいろな思い出が出来たね。」

「やっぱり降り立った時に、そしてポラボラス海峡を目にした時、遠くに寺院ジャーミィが見えて鳥が飛んでいて…ああ、帰って来たんだってそう思ったわ。」

「心が動く風景はあるなぁ、体感やね。」

「生きている間に懐かしく思う小物や土地は、生まれる前の前世の記憶だとか。何となく、分かる気持ちがする。」


膝上で大事に抱えられていて、とても居心地が良かった。

あっと思い出して、ワインを口に含みその場所で膝立ちをしてみる。腰に腕を回された。

首をゆっくり傾ける。口移しでワインは聖の喉に流れ入り血は流れる。喉が上下してワインは飲み干された。

「もっと…」

もう一度、飲ませると今度はぐっと引き寄せられた。ワインを吸い取られ、舌を奪われる。

何度も何度も唇は線をなぞり、舌は舌を追う。感覚がワインのせいでも麻痺させられて行く。



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