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・辿りつく 先には・
第17章 『距離』
後ろから強く強く、抱きしめられた。首筋には唇が這い、紅い印は残される。

愛の印は無数に付けられた。聖の愛情と魔王の所有物だと言う証。

貫かれる度に、意識は飛ばされる。気持ち良さの中には、何も恐怖は無かった。
苦しい毎日の事も、悲しんだ沢山の夜も全ては快楽の世界に飲み込まれ今あるのは魔王のくれる深い愛と支配の海だった。

手足の指の先まで、快感は常に翔ける。意識を保とうとしても、すぐに次の快感が来て打ち寄せては引く波のようだった。

「絢音、何度も何度も抱いてやる。此処にいる間はお前は服など要らない。紅い首輪を付けて、主人の帰りを待ち。」

返事をするのすらもう出来ない程、突き上げられる快楽が辛かった。

「ご主人様…もう…本当に駄目で…す。ああ、中が熱い熱いの聖。お願い…もう」

身体中が熱を持ち、喉は焼け花園の蜜は溢れ厭らしい音が耳にこだまして心も持ちそうにない。

「俺の全てを受け止めろ、逝くぞ絢音。しゃがめ、口を開けろ。」

ぐっと辛い圧迫から解かれ、膝を付いて身体は崩れ落ちた。

顎を捕まれ口を塞がれる。咳込みそうになるのを必死で抑えながら、魔王から出された快楽の液体を全て飲み干した。

それは儀式だった。それを何度でも飲む事で、服従を示し聖の物だと誇張する。
聖は支配する事で人を憎みながらも、きっと心の奥底では探しているのだろう。

同じ考えを持っているから、自分にはそれが分かる。人を信じる事が出来ず、人を憎み蔑みつつも心の何処かでたった一人でいい自分だけを愛してくれる人間に出会えたらと…

裏切られながらも、人の肌を求めて止まない。複雑な人間の深層心理がそこには存在していた。

「全部、飲み込み。これもだ。」

口の端に垂れた液を指で掬われ、口に指は入れられた。

それを愛しく手錠をされた手で優しく包み込み、ゆっくりと舐め上げた姿を目にして背筋を震わせ満足していた聖。

頬に指を這わせ、輪郭を撫でるとその手に擦り寄る絢音。愛しさが心から沸く。
「一生奴隷になるか?何もかもを捨て俺の物になり絢音。」

とろんとした眼差し。まだ現実に精神が戻って来れなかった。子宮は震え、身体は熱いままだ。

抱き上げてくれ、ベッドに横たわり足の間に入れられすっぽりと抱きしめられた。温もりが心を静める。
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