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第18章 『発見』
どんなに自分が聖を思おうと、無駄なのかもしれないとそう思った。

聖の心は、手に入るものではないのだ。それは霞を捕まえるようなもの。

現実にいるようで、夢の中の住人。鬱病のせいなのか、今の世界にいるのに時折とても遠くに聖を感じた。

半分は現実に身を置き、半分は夢の中に魂を置き去りにしている。そんな感じなのだろう。

現実を逃避し、辛い事、悲しい事から心を遠ざけた。それが鬱病の自分を守る術だ。

自分は時を止めていた。その時を動かし、自らの力を放ち始めた。確かにまだ精神は不安定だ。

だが、今度こそ全てを愛して全ての私の愛した人々を私の世界の中だけでも幸せにしたい。そう強く思った。

人は決して一人では生きられないのだから。

だからこそ、愛すると言う気持ちだけで人の心を温め救う事が出来たらと願うばかりだった。

それが自分のエゴであることも、十分に分かっていた。

おごりであり、高ぶりだと言う事も…何故なら自分自身こそが鬱病を上がってきたから分かっているのだ。

自分の気持ちは自分でしか救えない。

どんなにか、安心を貰う事は出来るだろう。肌を温めて貰う事も、心を温めて貰う事も…

だが、立ち上がるのは自分でなくてはならないのだ。

生きたいと強く願い、一分一秒も惜しみ生きる事だった。

それを思い出し今、此処にいるのだ。

沢山の想いが溢れ、深呼吸をする。やりたい事を成し遂げよう。

聖を想い、此処まで着たのなら聖の愛を受け溺れ全てを感じ返さないと時は無駄になる。

私の愛している気持ちだけは、私のものだ。

聖を愛した女達は、どんな想いでこの部屋にいたのだろうと考えた。


愛に溺れた者、悲しみを持った者、何人もの女達が聖を通り過ぎたのだろう。


あの激情の愛を受け、身を焦がし、そして皆、気付くのだ。
現実に帰らなくてはと…

聖は本当は誰も愛さないのだと、気付いて現実に引き戻される。

残忍なまでの、拒絶を受け魂を壊された者もいただろう。本人が話してくれた事すらある。
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