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・辿りつく 先には・
第5章 『現実』
「新幹線で目が合った時に、全身の血 魂 心が 固まってしまって 魂の一部を切り取られてしまった感じがしたの。」

それには流石に表情に出そうになり、絢音から目を逸らした。心が躍るのを気取られてはならない。さりげなく聞く、声は落ち着いていた。
「やっぱり時折、絵を描いたりもすると話していたし 感受性が強いやな。表現が面白い。魂をもろうてもええのか?それは美味しそうやけどな~絢音はいい香がするし…」

手を口に近付けられそうになり、ぎゅっと力を込める。

「貰っちゃ駄目…スキンシップはいつも、そんな風なの?自分からいくのはいいけど、人に得に男性にされるのは慣れてないからちょっとつらいの…」

「だって三日間しか、絢音を見ていられないんだよ。このあとも4時間も離れるし。」

もうこの人は、人と接する時にはストレートな人なんだと認識する事にした。キリンの姿をした魔王なんて、確かにおかしいわと思った。

だがその絢音の感が後に、間違いではなかった事を知る。それはまだ先であったが。

「魔王かぁ、なってみたいもんやな~」

語尾の伸びが耳慣れないが、何故か心地良かった。

「ならないで、魔王は怖いから 笑 ホテルは二つ先ね とりあえず、疲れたでしょう。新幹線、朝も早かったし。」

「大丈夫、逢いたい気持ちで来れたから。少し眠ったし。絢音こそ、僕のわがままを聞いてくれてありがとう。」

「私も、私の気持ちが知りたかったから 貴方も鍵を持つ人になるのかも。」

「鍵?を持つ人?」

「人生で迷ったり、何かある時に 私の前に次の世界の扉を開けてくれる人がやって来る時があるのだけど。」

Nは独特な絢音の、世界観を楽しんでいたのだった。今までには回りにはいないタイプであったからこそ、彼女に惹かれたのだ。芸術的なアーティストは今までの奴隷にはいなかった。

「貴方がさっき、強引にだったけど抱きしめてくれた時に一つだけはっきりとした事が分かったから。」
「なんや?」

かなりの興味を惹く、人物にあえて満足感を得ていた。

「肌から愛が滲み出て、想いを言葉だけでなく伝えられたのは初めてだったから。愛は一方的では駄目だと、はっきりと分かってしまったのよ。だからとても、感謝してます。鍵をくれたこと。」


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