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・辿りつく 先には・
第5章 『現実』
「荷物は持つから心配しないで、先に降りて。」

「でも、せめてスーツ持ちます。」

さっと手にしてでも反対側の、手の温もりはそのままだった。

「おおきに、絢音 足元。」

恥ずかしさを消し去るように、降りたら爪先からつまづいてしまった。後ろからお腹、回りを腕で止めてくれた。

触れられるたびに、焼かれそうだと思った。 はにかみ笑う。
「昔から何もないとこで、つまづいくの。不思議な癖なんだけど。」

後ろからぐっと、更に抱きしめられ首筋に唇が触れた気持ちがして 驚いて振り返った。

そこには口端に微笑を、浮かべる魔王の顔のNがいた。

それに下腹部が熱く、燃えてしまうようだった。

「香りも最高にいいけど、滑らかな肌は北国育ちだったから? 」

きちんと立つまでに時間がいる、回りはそこを避けるように人々が下へ向けて降りていった。

ざわりと背中に何かが走る気持ちがした。

「頬が赤いよ、人混みに逆上せた?あんまり人混みは得意じゃない言うてたなぁ~僕もやよ。絢音からは危なかっしくて、目を離せへん。」

「もう、分かっててまた。そういう言い方は狡いわ。だから魔王みたいなのっ。」

耳元での囁きに、体が固まる。

「魔王がお好みだろう、絢音は。待ってたはずだ。Mの顔をしている。」

それにはっと見上げた時には、眼鏡からサングラスに架け替え 表情が見えなかった。

涼しい顔をしてSの顔を覗かせる魔王に、絶対に女慣れしているのだと思った。
表に出る私のS性がそれに反抗心を燃やし、男への軽蔑があらわに出そうになるのを抑えられない。
先をちょっと歩いた、Nの手を引き言った。

「誰にでも、私を見せてきた訳じゃないわ。」

「じゃあ、僕が今までの奴等より 一番多く見るよ。絢音の全てをね。」

ぐっと腕を引かれ心まで惹かれてしまうようだった。

「全てなんて無理よ。」

「この世に無理な事を可能にしてきたのが人間。僕の中の魔王を感じたんやろ。なら絢音は僕の奴隷になれる。」

囁く声、サングラスを叩き落としたい衝動に刈られた。

煽られるのが何より嫌いだった。

「私は貴方の奴隷になんて、ならない。今までの女達とは一緒にしないで。」
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