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第7章 『契約』
部屋にノックの音がして、二人で合言葉を言い合う。

「キリンさん?」

「僕のアルパカさん、開けて。」

それにちょっと笑ってからドアを開けた。

するりと入って来た、キリンは背をかがめアルパカを抱きしめて唇を奪った。

慣れたりする事は、出来ないだろうと思いながらも恐る恐る腰を抱きしめた。

深い深い口付けを、ゆっくりとされてから まるで味あわれるかのように唇を食べられた気持ちがして 腰を掴んでいた手に力が篭った。

それを感じて、抱きしめた後に 顔がどうしても冷微を浮かべそうになり 隠す為に胸の中に閉じ込めた。

「ほんまに逢いたかった。ちょっとしか話さないで、会社に出掛けたから夢の様な気がしてならんかった。絢音のいい香がする。香水を付けてる?」

上を見上げる、形にいつもなってしまう。首を振った絢音。
「昔から色々な物に敏感で、肌も弱いけど 香は一番 気になるから香水とか無理なの。」

「そうなんや、でも凄いそそられる香がしてる。好きな香や。」
それに頬を赤らめた。言われた事がなかった。だが胸に顔を埋めて、絢音も呟いた。

「それなら聖だって、甘い香がするの。何だろう、嗅いだ事のある香なの。」

ちょっと片手を離して、手を嗅いで見る聖。

「自分で自分の香は、やっぱり分からへん。でも香水なんて付けてへんよ。絢音は柑橘系の香がする。」
「あっ、分かった。バニラ・エッセンス。甘い香の最後に少しだけ シナモンみたいなスパイスな香。」

それに笑った二人。扉の前で、お互いの香を嗅いでいたのに可笑しくなったのだ。

「分かったとこで、ちょっとだけこの辛いスーツを脱がしてや。でも、とりあえずベッド。」

そうして、ベッドに倒れ込んでしまった。かなり体力も、気力も使ったのだろうなと思った。鬱の時は神経が、人の何倍も気遣いに使われる。

ベッド脇に転がった、靴を揃え扉横に持って行った。それから俯せに、ダイブした聖の肩に手をやり腕を上げてとスーツのジャケットを脱がせてやった。

流石に下は無理だったので、ネクタイも外されたのを手に貰おうとしてまた腕を引かれた。
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