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第9章 『調教』
「私は貴方の奴隷なんかは、ならないわ。こんな無理矢理は嫌、身体は反応しても心がついていかないわ。」

それに聖は自分の顎に手をかけ、小声で話していた絢音をしげしげと観察していた。片手はまだ肩に残されていたが…

その見られている状況が、慣れないのと恥ずかしいので本当に辛かった。

こんなに指先までも、見られた事は無かったから…

「まだ始まったばかりや、絢音。心配せんでええ、今までで一番 美しく気高いお前を楽しませたるさかい。心を楽にせな。」
「話していた時は、とても落ち着けていて幸せだなと思ったのに…」

「その幸せを、お前が見たことのない聞いたこともない極上の体感をさせたる。本当は気持ちが良かったんや、心が逆ろうてるだけや。それが心と共に感じれば、もう他の世界はいらん。僕と絢音だけの、世界がくるんよ…」

この人はなんて、深く深く私の心に杭を残し言葉で侵入をしてくるのだろう。二人だけの究極の世界、恐ろしくそして私が最も望んでいた世界をくれると意図も簡単に言う。それが怖かった。言葉の絶対力を、操る魔王に怯え奮えた。
何故なら今まであまり、男性との行為で逝った事がない私を唇と指先で簡単に導いた。

お酒をぐっと飲んでしまった。堪えられなかったからだ、視線に言葉に…

小さな呟きの言葉は聖には、届かなかった。

「貴方は本当の私を知らない…」

言葉じりと同時に、店員が現れた。

「ああ、良かったですね。少し良くなられましたか?お水と冷たいおしぼりをお持ちしました、お使い下さい。」

出されたおしぼりを横に見て固まる、絢音。

それに先程、寄り掛かる自分の姿を見られていたのかと思い、更なる赤い顔になったのを目にして聖の楽しげな笑い声が響いて店員はどうしたら?とそこに固まっていた。

「気遣い、おおきに。ほら、絢音。」

それを首筋に、当ててやっただけでも身体を硬直させて なんて初々しい反応を示すのかと嬉しくなるのだった。

男性店員すらも、顔を何故か赤くしながら失礼しましたと足早に立ち去って行ったのを見て半ば諦めた。

また深呼吸をしている、自分にも呆れる。この人には内も外も関係ないのだ。

大事にされているのは、分かるだけ文句が口の中で泳ぐ。
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