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・辿りつく 先には・
第10章 『夜伽』
部屋に上がり、先にお風呂に入るかと聞いたが薬を飲んで少し横になってからにと言われた。

自分は薬を飲んだのは、睡眠導入剤のみだったので 安定剤やらの薬がどんな風に切れ それがつらいかを体感していなかったから分からなかった。

マッサージをするかと聞いたが、お風呂に入った後がいいと言われ 薬を取って来て水を渡したが、ベッドから見上げられる。何?と目線を合わせる。

「水も持つのつらいから、飲まして。」

でもと言っている内に、錠剤を口に入れてしまった。それが甘えである事が分かっていたが、はかない姿には自分自身が弱かった。

それも分かっているのだろうと、思いつつ水を口に含み寝ている横にしゃがみ込み口移しをする。少しずつ、飲ませてあげるとごくんと喉が鳴った。

その音が、静かな部屋に響く気がした。身体を起こそうとしたが、一歩 遅かった。

又してもぐいと、身体を引かれ胸元にすっぽりと抱きしめられてしまった。

だが今は怒る気持ちにも、なれなかった。あんなにも昼間と夕食時の姿の印象が強かったからだ。

じっと大人しくしていると、上から見られていた事に気付いてちょっと身を強張らせた。それを感じて、頭を撫でられる。

髪の毛を触られるのが本当は、一番苦手だった。頭を触られると、懐いた証の様に感じていたからだったのかもしれない。そんな事を考えていたら、声が降り注ぐ。

「本当に猫みたいやなぁ。髪の毛が柔らかい。それに艶やかな黒い髪、黒猫。」

それに笑ってしまった。確かに黒い髪だけは唯一、自分の体の中で好きになれた物だった。だからこそ、触られたくなかった。

なのに出会った時から、触れられても平気だった事を不思議に思った。

「だからアルパカさんみたいに、可愛くなんてないのにって思ってたのよ。よく、本当に猫に似てると言われるもの。気まぐれでわがままで、中々 懐かない。」

髪の毛を撫でられるのが、今は心地好いとさえ思った。

「僕には懐いたやんか、今は腕の中。」

段々と調子が戻ったのかなと思った。薬も少しずつ、効いてきたのだろう。

「違うでしょう、聖が強引に仕向けて行った結果が今 こんな風になったのよ。」

漸く反論が出来た、それに軽く笑った。
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