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第10章 『夜伽』
笑い声が聞けて安心した。自分も鬱病をあけたとはいえ、まだ日が浅い。

気持ちの変化には、敏感だった。

「ほな、結果良しやな。絢音のねぐらは此処やから。さっき自分から言うたの、忘れたらあかん。」

「忘れないけど…」

「けどは無しや。眠くなる前に、風呂入り。何なら一緒に入るか?」

いつもの聖だったのに、どっちがいいのだろうと考えた。毎回ドキドキさせられるのと大人しいのと。

ぐいっと胸を押して、今度はさらりと離れられた。

「そんなのは駄目です。すぐにそういう事を言うんだから。少し、休んでいてね。」
離れようと後ろを向いた時は、不意に手首を捕まれ はっとした。

「一人にする前に、する事あるやろ。」

もうっと言ったが、手を離してくれそうに無かったのを目にして振り返りベッドの縁に座った。

両手を広げているのに、笑ってしまう。

「早う。」

心は早鐘を打っていたが、それを聞かれる前に頬にキスをした。片眉をそれにより、吊り上げた。

「絢音、そこやないやろ。もう一回、夕方みたいになりたいんか?」

それを言われ恥ずかしさを思い出して、さっと唇に触れた。それに頭を押さえられ、結局は深い口付けとなった。

漸く離してくれたのは何度も、何度も唇を食べられた後だった。走るようにバスルームに駆け込む。
身体の血液が全て心臓に向かう気がして、慌ててバスにお湯を少しだけためた。中で身体を洗おうと思い、下着を脱ぎ始める。

が、そこで手は止まってしまった。

あのお店からといい、今までの数々の事でショーツが酷い事になっていたのに戸惑う。

本当に一気に全て身体が丸々、入れ替えられてしまった気持ちがした。

女にどんどんと戻されて行く。そのスピードの早さに心は、ばらばらにされそうだった。

洗うと干すのにどうしようと思ったが、このままにも出来ず洗面台にお湯をはり今日の全ての下着を洗えば、気にされないかと思い先に綺麗にしてから湯舟につかった。

一日があっという間なような、長かった気持ちもする。
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