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第10章 『夜伽』
気持ち良いのを認めたくない自分がまだ生き残っていられたようだ。

抵抗をしたい、男性に力で封じられるなどもっとも屈辱だと思っていた絢音。

その眼差しを目にして、ほくそ笑む。

今までの奴隷なら最初の口付け一つで従順に堕ちた。

だがどうだろう、この黒猫の強い眼差しは聖の心を揺さ振った。

黒猫でありその中身は真っさらな白い猫へと姿を変え、純真で気高く 自分の心を切り裂くあの二つの瞳。

本当に久しぶりに愉しみを得られた満足に、人の面白さを思った。

「最初の写真を貰った時に、俺も絢音のその目に心打たれたわ。お前は本当に俺を愉しませてくれそうや。」

指先がまた胸に戻り、ぐっと左の心臓を外から掴まれるようだった。痛みが走る。だが目だけは逸らさなかった。

「いい目や、いつまでもそうしてられたらええけどな。」

口が胸の突起に当てられ、卑猥な水音が部屋と絢音の耳の中に落ちた。

わざと水音を立てて喰らう姿を、半ば憎しみすら篭った表情で睨んでいた。

これは凌辱だった。
私の心を砕き、身体を奪い完全に支配をしようとしてそれを身体から仕込まれている。

頭が悪い訳ではないと思いたかった。きっと今までの女達はあの最初の口付けで聖に全てを明け渡しただろう。

だが私は昔から可愛い女にだけはなれなかった。

男に屈するなど、出来ないのだ。プライドではない、私が獣であったから人間に懐くのが嫌だったのだ。

猫のままいたい、気まぐれでわがままで人にちょっとだけ懐いたふりをしていたかった。

なのにいきなり現れ首輪を嵌められるなど真っ平だった。抵抗力が戻り、ぐっと手を引こうとして片手で制された。

この細い身体の何処にこんな力があるのだろうと思った。

「暴れんな、気持ち良うさせてるんに。全く 可愛らしくならんな。」

やれやれと思いながら再び、唇を奪われ何度も何度もキスをされ空気を奪われ始めた。もがいても両手はがっちりと片手で掴まれ、執拗に胸は揉みしだかれ下半身は片足で間から突き上げられた。

手慣れ過ぎているのに、更に腹が立ったが下半身からの圧力に身体に力が入らない。

そして空気を奪われていくにつれ、頭の深が痺れる。光りがきそうで叫びたかった。
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