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第10章 『夜伽』
心の悲鳴と共に再び口付けと下半身を外側の威圧だけで逝されて、身体が砕け散りそうだった。

逝った後はなのに優しく、優しく抱きしめてくれて雨が降るように唇から愛を落としてくれた。

完全なる炎の魔王の、調教だった。

「仕置きされとうなかったら、大人しく抱かれろ。絢音を導きたいだけやから。一緒に世界へ、行くんや。ああ、今は聞こえへんか。」

耳には届いても、返事は出来なかった。

愛を感じつつ、被虐を同時に味わった。
だが優しいその唇からはいつも、お前を愛していると肌を伝わり心に訴えられているのを感じた。

呼吸が落ち着いてくる。

闇は広がり、聖は絢音を抱きしめていた。優しくなど、女を抱いてやったことはなかった。

だが終わったあとは、労るように抱きしめる。大事なおもちゃを、長持ちさせる為だった。

道具といえ、壊れてしまっては 楽しめなくなる。それは本意ではない。

呼吸が落ち着くように、顔や首筋にキスを雨の様に降らす。
身体のほてりが消えて行く。逝かされたあとは身体から、全ての悲しみやつらさ 憎しみが吐き出されるようだった。

悔しくて、悔しくて 涙が出そうになるのを堪える。

「優しい、優しいキスをして。今だけは。」
それに微笑みを浮かべ、静かに温かい唇を落とした。

そっと触れるか触れないかの口付け。同じ人物だとは到底、思えない 温かいキスだった。

「愛してる、絢音。いい声で鳴くなぁ、そそられ 少し感じれたわ。」

「こんな強引なことばかり、してきたの?
愛してるなんて、口先だけじゃない。今までの女達は馬鹿なの?貴方は女を道具にしてるだけだわ。」
それには声を出して、笑ったのに驚いた。

「道具は大事にしてやる。僕はそういう主義やから、だから絢音も大事やよ。」

「そんなの愛してる事じゃないわ。」

「それが僕の愛し方やさかい、文句 言われても困るわ。絢音にとってそれが酷く見えても 女達は喜んでたで。」

「私はあんな愛し方では、心が砕かれるばっかりよ。」

「それは絢音が僕に愛してる気持ちを、向けへんから。手荒にされとうなかったら、一度でええ 素直になり。違う世界に、連れてったる言うてるのに。」
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