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残像
第2章 記憶
八尋は、一座で生まれ育った。

口減らしで売られてくるのは大体五歳くらいの子だが、八尋は物心ついた時から一座に居たから、おそらく一座で生まれたのだろう。
父も知らない、母の記憶もなかったが、女芸人は優しくしてくれた。

おそらく、女芸人が客を取って孕んだまま、子おろしにしくじって産んだと思われる。

色が白く、可愛らしい顔立ちで、よく女の子と間違われたし、この方が似合うと女の着物を着せられた。

しっかり歩きだす頃には芸も仕込まれた。

記憶にあるのは、走り回る時分になると、身の軽いうちと、高い所に張った縄の上を歩かされたり、大人の頭や肩に乗って、その大人が曲芸をする、といった調子だった。

七、八歳になると、小刀を扱う芸もあった。
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