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残像
第4章 脱走
男に抱き締められて寝転がる、それは八尋にとって、抱かれることを意味する。
当然求められているものと思って、市九郎の着物を脱がそうと合わせに手をかけた。
教えられた通り、首筋に吸い付き、鎖骨まで舌を這わせる。
ところが、市九郎は応えることなく、逆に慌てたように八尋の肩を掴んで引き離し、

「いや、そういうんじゃねぇんだ、そういうのはいいから。ちっとだけ、身体温めたいだけだから」

そういって、八尋を抱き締めたまま眠った。

八尋は抱かれずに人と眠るということがなく、戸惑う。

だが、徐々に市九郎の身体に体温が戻ってきて、温かくなってくると、不思議と安心した。

その時、市九郎から少し血の臭いを感じる。
疑問には思ったが、眠っている市九郎には聞けなかった。
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