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残像
第4章 脱走
新しいアジトに向かう途中、あの商家のある町を通った。
八尋は地味な女の格好をさせられ、また市九郎は髪を総髪に結い上げ、どこから見ても遊び人のようで、時折八尋の肩を抱いたり、いかにも執心した女につきまとう男、といった体。
八尋はおどおどとただ歩いているだけだったが、逃げもせず声も出さず共に歩む様は、驚いてはいるが内心まんざらでもない女に見えた。

途中、市九郎は腹が減ったから蕎麦でも食おう、と蕎麦屋に入る。
そんな中、人の話し声が聞こえる。

あのガマ親父、死んだってな。
夜盗に殺されたそうだぜ。
ザマァ見ろってんだ。
あの薮睨みの番頭もよ、何年かに一度見目のいいガキ買ってあのガマの餌にしてたんだろ。
おぅよ、俺っちの同じ長屋にいたおタケさんのとこなんかさ、末のシン坊が買われっちまったんだ。おタケさん、シン坊がまだ乳飲み子の時分に連れ合いが死んじまってよ、その後菓子問屋の二代目と縁があったんだがよ、ガキ四人も引き連れて後添いに貰って貰えんだ、って、そりゃあ喜んで行ったのさ。おタケさんが出掛けた間に亭主がシン坊を売っぱらっちまったんだと。
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