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残像
第5章 陽炎
朝、目覚めると、市九郎が横の寝床で大の字になり、大いびきをかいて寝ている。

ふと見ると、その下腹あたりがこんもりとしているように見えた。

そっ、と薄い上掛けを捲り、下帯に触れる。

硬い。

それが何であるかは知っている。

大人になる前に男でなくなった八尋には、それがただの生理現象であることは解らなかった。

八尋にとってそれは、欲情している証なのだ。

ならば、楽にしてやらねばなるまい。

野盗の仕事で助けになっているかどうかはよく分からず、自信がなかったが、これならば自信がある。

己の身の他に、何も持たぬ八尋にとって、市九郎に恩を返せる千載一遇の機会だ、と思った。

そっと下帯を解くと、飛び出すように跳ね返る。

一番敏感な下側に舌を這わせ、そのまま先端を口に含む。
唾液を絡ませ、奥まで咥え込んでは先端近くまで吐き出す。無理矢理口を使われるのは苦手だったが、喉の奥に当たらぬように己で加減できれば、苦ではなかった。
何より、市九郎を気持ちよくしたい、その一心だった。

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