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残像
第2章 記憶
それが、本来であれば女の体内に注ぎ込まれる子種であることや、男を女のように抱く趣味の者がいる事など、本来の男女の営みすら知らぬ八尋が知る由もなかった。

ただ、大人の芸人たちは諦めたのか慣れたのか、また、そうせねば食って行けぬと腹を括っているのか、さほど気にした風もなく、淡々と準備をする。

「俺は今日相手が女だからな。楽なもんだぜ」

「いいなァ…俺なんか女に当たったことねぇや。だってよぅ、金貰って女抱けるなんてそんな楽な仕事あるかい」

「止めとけ止めとけ。どうせ嫁の貰い手もねぇブスだよ」

「ブスでも何でも女抱けんだろ?」

「辰の奴なんかそれで喜んでたら、客が持ってたみたいでよ、シモの病移されてしばらく寝込んでやがったぜ」(※シモの病…性病)

「シモの病なんてケコロでも持ってらぁ。金払ったって移る時ゃ移るんだからよ、金貰ってなら御の字だろ」(※ケコロ…街娼の蔑称)

「どっちにしたって俺らの懐に入るわけじゃねぇ。上客が付きゃあ飯がいつもより増えるくらいさ。」

「違ぇねぇ」

ハハ、と男たちは笑い合っていたが、何がおかしいのかは八尋にはわからなかった。
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