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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第20章 【二十話】慣れないこと
□ ■ □
社葬を行うのは、参列者の多さと急なことだったことと、報道関係者が詰め寄ることを考えて、市街地から離れた場所で行われるようだった。
景臣の運転する車は迷うことなく式場に到着して、裏口から従業員を装って入った。
駐車場に止め、景臣に案内されるがままエレベーターへ向かおうとしたところ、玲那はふと足りない物に気がついた。
「あの、景臣さん」
「なんでしょうか」
「トークハットと黒の手袋は?」
祖父と祖母の葬式のとき、そういったものをするのだと教えられて実際に着用したことを思い出した玲那は聞いたのだが、景臣は首を振っただけだった。
「親族側としてならご用意しましたが、一参列者として列席されるので、ありません」
「そうなの」
言われてみれば、玲那は祖父母の葬式以外に出席するのは初めてかもしれない。
そう思うと、なんだか不思議な気持ちだ。
道弘が生きていたら、玲那は新婚旅行に行っていたはずなのに、なにがどうなったのか、今、こうして夫となるはずだった人の葬式に出席しようとしている。
「……なんだか、変な感じですね」
「変とは?」
「生涯をともにするはずだった人が、歩み始める前にいなくなってしまうなんて」
学校を卒業して、進路が別々になったために会わなくなってしまった人もいるけれど、その人たちといざ会おうとしたら会えるけれど、道弘とは会おうと思っても、亡くなってしまったのだ。
もう一度会いたいかと聞かれたら、すぐに「はい」とは言えないけれど、それでもやはり、いなくなってしまったのは素直に悲しいと思う。
「あなたにも悲しいという感情はあるのですか」
失礼ともとれる発言だったが、駐車場に車が入ってくる音がしてきて、玲那が言葉を口にする前に景臣は首を振ると、玲那を伴ってエレベーターに乗り込んだ。
社葬を行うのは、参列者の多さと急なことだったことと、報道関係者が詰め寄ることを考えて、市街地から離れた場所で行われるようだった。
景臣の運転する車は迷うことなく式場に到着して、裏口から従業員を装って入った。
駐車場に止め、景臣に案内されるがままエレベーターへ向かおうとしたところ、玲那はふと足りない物に気がついた。
「あの、景臣さん」
「なんでしょうか」
「トークハットと黒の手袋は?」
祖父と祖母の葬式のとき、そういったものをするのだと教えられて実際に着用したことを思い出した玲那は聞いたのだが、景臣は首を振っただけだった。
「親族側としてならご用意しましたが、一参列者として列席されるので、ありません」
「そうなの」
言われてみれば、玲那は祖父母の葬式以外に出席するのは初めてかもしれない。
そう思うと、なんだか不思議な気持ちだ。
道弘が生きていたら、玲那は新婚旅行に行っていたはずなのに、なにがどうなったのか、今、こうして夫となるはずだった人の葬式に出席しようとしている。
「……なんだか、変な感じですね」
「変とは?」
「生涯をともにするはずだった人が、歩み始める前にいなくなってしまうなんて」
学校を卒業して、進路が別々になったために会わなくなってしまった人もいるけれど、その人たちといざ会おうとしたら会えるけれど、道弘とは会おうと思っても、亡くなってしまったのだ。
もう一度会いたいかと聞かれたら、すぐに「はい」とは言えないけれど、それでもやはり、いなくなってしまったのは素直に悲しいと思う。
「あなたにも悲しいという感情はあるのですか」
失礼ともとれる発言だったが、駐車場に車が入ってくる音がしてきて、玲那が言葉を口にする前に景臣は首を振ると、玲那を伴ってエレベーターに乗り込んだ。