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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第20章 【二十話】慣れないこと
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 式場に着くと、予想以上に混雑していた。
 そつのない景臣は香典と数珠もきっちりと準備をしていて、さりげなく玲那に手渡してきた。
 玲那はそれを受け取ると、どうすればいいのか分からずにおろおろとしたが、並ぶように誘導されて順番が回ってくるのを待っている間に、どうすればいいのか周りを探った。
 そして玲那の番が回ってきて、たどたどしくもどうにか済ませて、ホッとした。
 しかし、これで終わりではなく、むしろ始まりである。
 会場内に足を運ぶと、すでに式は始まっていたようで、読経が場内に響いていた。景臣に導かれて列に並び、見よう見まねで焼香を済ませた。
 玲那はどうしたものかと悩んでいたら、景臣に座るように言われたので、中程の端に座った。たくさんの椅子が並んでいたが、座っている人はあまりいないようだった。

 ようやくそうやって落ち着くことができて、中の様子を見ることができた。
 会場はかなり広いはずだが、焼香をする人たちが真ん中に列と成していたので、なんだか窮屈だ。
 一方、椅子が並んでいるところにはまばらにしか人がいないからか、淋しく感じた。
 焼香に訪れている人たちの先頭に目を向けると、生前の道弘の写真が飾られた祭壇が目に入った。こうやって改めて見ると、やはり大きな会社を率いていただけあって貫禄がある人だなと玲那は思った。
 本来ならば遺影の前に遺体の入った棺桶があるはずなのだが、まだ警察から返ってきていないということで、そこには白い菊を基調にした思ったよりも色とりどりの花が飾られていた。
 ぼんやりと眺めていると、景臣が耳打ちをしてきた。

「今、焼香をされている方が前の奥さまです」
「……はい」

 遠目だし、喪服を着ているのとトークハットをかぶっているためにわかりにくかったが、道弘と結婚すると内々で決まってすぐにやってきた女性と一緒だった。後ろの娘だという二人も似たような格好をしていた。

「……あの人です」
「そうですか。ちなみに、後ろに控えている二人の女性が社長の娘さんたちです」
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