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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第2章 【二話】不在で交わされた契約
     □ ■ □

 実家に戻ると、父と母に抱きしめられ、玲那は戸惑った。

「玲那、無事でよかった……!」

 無事とは、道弘のように殺されなかったことなのか、それとも傷物にならなかったことを言っているのか。
 玲那にしてみればどちらでもいいと冷めた目で二人を見ていた。

「それでね、玲那さん」

 玲那を抱きしめていた父と母は顔を見合わせると少し言いにくそうに口を開いた。

「道弘さんが亡くなってすぐにこんな話をするのも不謹慎だと思うのだけど」
「道弘くんというスポンサーを亡くしたわれわれは悲しいことにまたもや困窮することになる」

 玲那は両親の言葉に呆然としてしまった。

 玲那は家のことを思って覚悟を決めて道弘に嫁いだ。それなのに、その覚悟をあざ笑うように道弘は亡くなってしまった。
 玲那としては、好きでもない道弘と夫婦の営みというものをしなくてすんだという安心感はあるものの、やはり夫となるはずだった人物の急死は悲しかった。玲那のように悲しめとは言わないけれど、葬式もまだの状態でお金のことを言える不謹慎な二人に玲那はめまいを覚えた。

「……お父さま、お母さま? 道弘さまからかなり融通していただいたと……」

 いやそれよりも、ポーズでいいから悲しんでほしい。
 玲那のそんな願いも叶わず、父は大きく頭を振った。

「目先のお金は工面してくれたのだけど、残りは玲那との結婚生活が軌道に乗ったらと言われたのだよ。こちらは大切な娘を差し出したのにひどいと思わないかい」

 父の答えに、玲那は驚きのあまり目を見開いた。
 玲那とて成人して数年経っている。春に大学を卒業したばかりだが、それなりに世間は知っていると思っている。
 道弘の言い分はとても正しい。これまでの取引実績があるとはいえ、父が言うがままにお金は渡せないだろう。詳しい金額は知らないが、道弘から数千万円ほど融通してもらったと聞いている。それでも足りないだなんて、おかしいのではないだろうか。

「お父さま」
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