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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第29章 【二十九話】人の命の儚さ
どれくらいそうやって道弘の顔を見ていたのだろう。耳元で景臣の声がして、玲那は顔を上げた。
「やはり名残惜しいのですか」
「……いえ」
「情を交わした仲ですから、別れが淋しいのですか」
景臣の囁く声に玲那は首を振り、胸元に抱えていた残りの花を柩の中へゆっくりと入れ、離れた。
「それでは、ふたをいたします」
脇に避けられていたふたがされ、棺台車に乗せられると、火葬炉へ移動となった。
「火葬炉へはこちらから行くそうです」
と景臣に連れられて式場を出て、一度、エントランスへ。
ホールを通り抜けていくと扉が見えて、そこに入るとすでに道弘の柩は到着していた。
玲那たちと同じように喪服を着た人たちが何人かいて、ハンカチを片手にすすり泣いている者や家族に支えられて泣き叫んでいる者もいた。あれがきっと、ここでは普通の姿なのだろう。
玲那のように、悲しいとも淋しいとも、そんな感情が浮かんでこない方が異質なのだろう。
「それでは、こちらの炉に入れます」
職員の声に玲那は小さくうなずき、道弘だった身体が入った柩が吸い込まれていくのを黙って見守っていた。
「やはり名残惜しいのですか」
「……いえ」
「情を交わした仲ですから、別れが淋しいのですか」
景臣の囁く声に玲那は首を振り、胸元に抱えていた残りの花を柩の中へゆっくりと入れ、離れた。
「それでは、ふたをいたします」
脇に避けられていたふたがされ、棺台車に乗せられると、火葬炉へ移動となった。
「火葬炉へはこちらから行くそうです」
と景臣に連れられて式場を出て、一度、エントランスへ。
ホールを通り抜けていくと扉が見えて、そこに入るとすでに道弘の柩は到着していた。
玲那たちと同じように喪服を着た人たちが何人かいて、ハンカチを片手にすすり泣いている者や家族に支えられて泣き叫んでいる者もいた。あれがきっと、ここでは普通の姿なのだろう。
玲那のように、悲しいとも淋しいとも、そんな感情が浮かんでこない方が異質なのだろう。
「それでは、こちらの炉に入れます」
職員の声に玲那は小さくうなずき、道弘だった身体が入った柩が吸い込まれていくのを黙って見守っていた。