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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第30章 【三十話】収骨
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 道弘のお骨を拾いながら、玲那は不思議に思う。
 焼く前は空っぽだったのに、燃焼によって質量が減っているはずなのに、骨壺に骨がみっしりと詰まっていくのはどうしてだろう。
 冷静に考えれば、柩と骨壺のサイズが違うのだからそうなるのは当たり前であるのだが、なんとなく釈然としない。
 骸は空っぽなのに、空っぽを焼けば密度が増えるなんて──。
 人の本質とは、骨、なのだろうか。
 ぼんやりとそんなことを考えていたからか、手が止まっていたようで、景臣が近寄ってきた気配で気がついた。
 景臣は腰を屈めて玲那の耳元に口を寄せ、囁いた。

「骨にまで欲情するなんて、あなたはなんと罪深い人なのでしょうか」

 思ってもいないことを言われ、こんな状況であったが玲那の身体は震え、気がついたら景臣の頬を叩いていた。
 ぱんっと小気味よい音が部屋に響きわたった。
 道弘の骨を拾うことに夢中になっていた小牧もこの音に気がつき、慌てて顔を上げた。

「玲那さん、景臣がなにか失礼なことを……?」

 景臣の父は二人の対角線上にいて、驚いてそう声をかけてきた。
 玲那は怒りのあまり勢いで景臣を叩いてしまったが、こんなときにこんな場所でする行動ではなかった。
 怒りでまだ身体が震えていたが、玲那は言葉を絞り出した。

「……申し訳ございません」

 震える腕をなだめつつ、玲那は道弘のお骨の乗った台から一歩、後ずさった。

「それはすぐに憎まれ口をきく。いちいち反応していたら身体が持たないよ。相手をしないことが一番だ」

 冷たいその言葉に、玲那は景臣が抱いている闇の一部をかいま見た気がした。

「次があると聞いている。玲那さん、申し訳ないが山浦社長のお骨を拾ってやってくれないか」
「──はい」

 ここで拒否の言葉を吐いても仕方がない。
 玲那は唇をかみしめて返事を返し、手にしていたお骨を拾う箸を握り直した。
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