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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第32章 【三十二話】波乱を呼ぶ遺言書

□ ■ □
そして次の日、関係者の都合が合うということで、十朱(とあけ)弁護士事務所に集合することになった。指定された時間に向かうと、小牧が二人を待っていた。
「昨日はお疲れさま」
とにこやかな笑顔で小牧が近寄ってくるのが見えて、玲那は無言で頭を下げた。
小牧は二人の側までくると、かなり不服そうな表情を浮かべた。
「ぼくのこと、警戒してる?」
警戒しているというよりは、身構えてしまうといった方が正しいのだが、小牧にしてみればどちらであっても一緒であるだろう。といって、素直にうなずくわけにもいかず、玲那は首を振った。
「なるほど、これを一瞬で手懐けた景臣って、やっぱりたらしの才能があるよ」
「手懐けてなどない。未だに噛みつかれる」
「あぁ、昨日みたいに?」
「あれは……!」
「うん、景臣相手だったら、あれくらいしても大丈夫だよ」
それから小牧は玲那のそばに寄ってきて、耳元で囁いた。
「淋しがり屋だから、正面から受け止めて、正面からぶつかっていいから」
「……え」
「景臣をお願いするよ」
「…………」
小牧はそれだけ囁くと、玲那から離れた。
「じゃ、会議室に移動しようか」
小牧に案内されたのは、前に契約をした部屋よりも上の階だった。えんじ色のカーペットが敷かれた廊下を通って一番奥へ。重たそうな両扉を開くと、そこそこ広い会議室の真ん中に大きなテーブルが一つ置かれていた。室内にはまだだれもいなかった。
「玲那さんは左側の奥へ。景臣、きちんと玲那さんを守ってね」
「……言われなくてもする」
「先に断っておくけれど、伯父さんの意向で、今日はお茶を出さないことにしたから」
そして次の日、関係者の都合が合うということで、十朱(とあけ)弁護士事務所に集合することになった。指定された時間に向かうと、小牧が二人を待っていた。
「昨日はお疲れさま」
とにこやかな笑顔で小牧が近寄ってくるのが見えて、玲那は無言で頭を下げた。
小牧は二人の側までくると、かなり不服そうな表情を浮かべた。
「ぼくのこと、警戒してる?」
警戒しているというよりは、身構えてしまうといった方が正しいのだが、小牧にしてみればどちらであっても一緒であるだろう。といって、素直にうなずくわけにもいかず、玲那は首を振った。
「なるほど、これを一瞬で手懐けた景臣って、やっぱりたらしの才能があるよ」
「手懐けてなどない。未だに噛みつかれる」
「あぁ、昨日みたいに?」
「あれは……!」
「うん、景臣相手だったら、あれくらいしても大丈夫だよ」
それから小牧は玲那のそばに寄ってきて、耳元で囁いた。
「淋しがり屋だから、正面から受け止めて、正面からぶつかっていいから」
「……え」
「景臣をお願いするよ」
「…………」
小牧はそれだけ囁くと、玲那から離れた。
「じゃ、会議室に移動しようか」
小牧に案内されたのは、前に契約をした部屋よりも上の階だった。えんじ色のカーペットが敷かれた廊下を通って一番奥へ。重たそうな両扉を開くと、そこそこ広い会議室の真ん中に大きなテーブルが一つ置かれていた。室内にはまだだれもいなかった。
「玲那さんは左側の奥へ。景臣、きちんと玲那さんを守ってね」
「……言われなくてもする」
「先に断っておくけれど、伯父さんの意向で、今日はお茶を出さないことにしたから」

