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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第33章 【三十三話】道弘の願い
 ちなみに、今回のケースで言えば、と惣一郎。

「法定相続人に当たるのは、あの姉妹のみとなるのだけど……」

 はーともう一度、大きくため息を吐いた。

「鑑定結果のとおり、二人は山浦社長とは遺伝子学的には父子関係にない」

 あの鑑定結果は予想外過ぎて驚いてしまったけれど、山浦社長は嫡出否認の手続きを本気でする気でいたのだろうか。

「彼らが離婚をする際、多香枝さんの不貞に関して話が出たし、証拠もあった。山浦社長は、本来ならば多香枝さんに慰謝料の請求はできるけれどしなかった。あの人なりに多香枝さんのことを愛していた……と私は解釈していた」

 道弘との付き合いは長いようであまりなかったのだけど、それなりに情に厚いところはあったのだろう。

「離婚をした後、彼は彼なりに二人の娘に義理立てして、再婚をする気はなかったようだ」
「……だけど、玲那と再婚しようとした」
「それはね、あの姉妹が山浦社長の実の子ではなかったからだよ」
「……え」
「筒宮さんから結婚の話が来る約一年くらい前に、社長はDNA鑑定をしていた」

 鑑定をしたのは、てっきり玲那との結婚が決まって遺言書を書き換えるタイミングでしたものだと思っていた。

「山浦社長は結果を見て、焦りを覚えたみたいだね。そしてそこにいいタイミングで玲那さんとの結婚話が舞い込んできた」
「…………」

 道弘側にそんな事情があったことを知らなかった玲那は、驚きで言葉も出なかった。

「山浦社長は親戚もおらず、山浦の血縁は彼一人となってしまった。娘のどちらかが自分の血を引いていればまだしも、どちらも自分の遺伝子を持っていなかった。このままでは山浦の遺伝子が亡くなってしまう……。彼はそう考えていたみたいだ」
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