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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第35章 【三十五話】悪意
     □ ■ □

 身体が──痛い。

 玲那が最初に思ったのは、それだった。
 そしてその後に、指先まで自分の身体が驚くほど冷たい感触。だけど左手だけは妙に温かい。

 最近では絹のガウン一枚で寝ることに慣れたけれど、それは景臣の温もりがあるからで、一人で寝ていたらいくら暑くなってきたとはいえ、とてもではないけれど寒いと思う。
 もしかして今、こんなに寒いと感じるのは、景臣が側にいないからだろうか。
 そんなことを思って玲那は指先に力を入れてようとしたが、思ったように動かない。おかしいと思いつつ、力が入らない指先で布団の中を探ろうとすると、きゅっと強く握りしめ返された。

「玲那っ?」

 ひどく驚いていたけれど、玲那の好きな、景臣の声。

 なんだ、側にいたんだ。

 玲那はそのことに安堵したけれど、それにしても、どうしてこんなに身体が痛いの?

「玲那、気がついたのか?」
「──……んっ?」

 口を開けようにも、なにかが邪魔して開けられない。それに瞼も重たすぎて、景臣の顔を見たくても出来ない。
 そうだ、景臣には一刻も早く伝えたいことがあったのに──。
 そう思っていたら、おでこと顔と首元を塗れたタオルが肌を撫でた。

「熱がある。玲那、まだ寝ていていいですよ」

 景臣の優しい声。

「無理しないで、ゆっくり休んで」

 言われてみれば、この感覚は熱があるときのもののような気がする。久し振りすぎて、戸惑ってしまう。

「俺なら、側にいるから」

 景臣の言葉に返事をしたつもりで、力の入らない指先を少しだけ動かした。景臣が触れているところだけ、感覚があった。

「ごめん、玲那」

 景臣の謝る声に玲那は疑問に思いつつ、意識がまた、遠ざかった。
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